デジタル資産の著作権に関するニュース
最近、Yahoo!ニュースで下記の記事が取り上げられていました。
【Epicが「盗用アセット」問題に対する姿勢示す!文明崩壊ソウルライク開発側の問い合わせへ回答―該当アセットは差し替えの方針】
https://news.yahoo.co.jp/articles/f19d141d3b621d27945d1bc13a61bf797524724f
記事の概要としては、
- Archangel Studiosという会社がPC向けにリリースしたオープンワールドゲームの3Dモデルに使用されるモーションが他の有名ゲームに酷似しているという報告があった
- このモーションはEpicが提供する3DモデルエンジンのUnreal Engineを使用する開発者向けに第三者が自分の作成した開発ソースを販売できるUEマーケットプレイスというところで購入したもの
- Archangel StudiosがEpic社に『ユーザーからUEマーケットプレイスで購入したアセット(素材)に著作権侵害の疑いがあると問い合わせがあったがどうなのか』と確認を求めたところ『第三者がマーケットプレイスで販売するアセットの著作権については調査しきれないから知りません。買っちゃった人に不利益があっても保証しないよ』と回答があった(和訳は筆者の解釈)
- Archangel Studiosでは該当のアセットを別のものに差し替えて対応することにした
というもの。
日本でもメルカリやYahoo!オークションなどで盗品が出品されて問題になることが時々ありますが、フリーマーケットでは運営者は場を用意するだけで出品される商品の保証まではしないということが当たり前になってしまっているので、ついにデジタル資産でも同様の問題が広まりつつあるということですね。
YouTubeでも関係のない第三者が音楽を丸ごとアップロードして再生数を稼ごうとする例が多発してYouTubeとJASRACで包括契約を結んでJASRAC管理音源が使用されていると判定されたら広告料等は包括契約に基づいて著作権者の取り分を差し引いた形にする対応をしていますが、プログラムのソースコードの話になるとJASRACのように組織化された著作権管理団体もなく個別に訴訟でも起こさないと止められないので問題は根深いな、と。
このニュースを見ていてホームページにも色々係る著作権の話を思い出したので書いておこうと思います。
なお、筆者は法律の専門家ではないので一般論としての避けた方がいいケースであり実際に著作権で争うべきものかの法的解釈は別の専門家に譲ります。
ホームページのソースコードの著作権は?
ホームページはHTMLとCSSと呼ばれるソースコードで書かれた文字列をブラウザが読み取って画面表示しています。この時、画面表示用の基本コードはホームページ閲覧者のパソコンに送信されているのでやろうと思えばソースコードを丸ごとコピーすることでまったく同じホームページを再現することが可能です。
この丸ごとコピー手法が悪用される例としては、フィッシングサイトなど詐欺サイトを運営する管理者が、画面上はまったく同じホームページを用意して「申し込み」や「問い合わせ」などのボタンのリンクだけ悪意のあるサイトにつながるように書き換えて公開するケースが代表的です。
よくある流れはメールなどでAmazonやappleを語り「あなたのアカウントがロックされました解除する場合は下記URLから申請してください」というメールを送り付けて、URLにアクセスするとAmazonやappleの公式サイトと同じようなデザインのホームページが表示されますが求められる個人情報を入力して「送信」ボタンを押すとまったく関係のないサイトに申請データ送られてしまうようなものがあります。
こうしたフィッシングサイト系の詐欺はホームページが公開されているサーバがあるのだから被害があれば犯人となるサイト管理者の情報もすぐにわかるだろうし逮捕も用意なように思えますが、サーバが海外にあるとその所有確認を行うだけで国際協力が必要になりますし、そもそもホームページ自体が乗っ取られた第三者のサーバで運用されていた場合はサーバの所持者を何とか確認できても犯人まで辿り着くのが難しくなるんですよね。『詐欺メールにご注意!』という警察やメディアの注意喚起を見かけても詐欺メール業者が逮捕されたニュースはあまり見かけないのはこうした背景もあります。
話しが横にそれてきましたのでここで閑話休題。
本題のホームページの著作権ですが、ソースコードにも著作権はあります。音楽と似たようなもので、開発者がソースコード自体に権利を持つことはもとより、その人が組織に属して業務として作成したホームページなら組織側にも第三者による改変・再販売などを防ぐ権利が発生しています。これがないと、ホームページ制作会社にホームページ作成を依頼して、出来上がったものをちょっといじって好きに第三者に転売できるようになってしまうのでWeb開発自体が業界として成り立たなくなってしまいます。しっかりと契約書を取り交わすケースでは「ホームページで使用するもの著作権は発注者側に帰属する」と記載しつつも「同一性保持・再販の権利は受注者に残す」と条件を付記するあたりはソフトウェア開発業界と同じです。
ホームページ制作者はここら辺のソースコードに係る基本的な権利部分をちゃんと知っているはずなので滅多に盗用問題が騒がれることはありませんが、実例がない訳でもありません。数年前にとあるサービスがリリースされるときに作成されたPR用のホームページが他の似たデザインのサイトとほとんど同じ構成であり、知識のある人がソースコードを確認したらほぼ同じものが使われていたということで一部界隈でいわゆる炎上状態になりホームページを一度停止させて作り替える事態になった、という話がありました。
その時の作り直し費用などをどのようにしたのかまでは情報がないので図りかねますが盗用が実証されれば製作者の責任ですし、そもそも発注者側で盗用を指示したとなれば責任の所在が色々を分かれてくるかもしれないです。いずれにしてもソースコードは誰もが確認でき、制作者によってプログラムの書き方はクセがあるので盗用してもバレやすいことは覚えておいた方がいいかと思います。
ここまでの話で触れたHTMLやCSSはクライアントサイドプログラム(利用者の端末にデータを送って処理するプログラム)なので盗用が容易ですが、ホームページのプログラムにはPHPやCGIなどのサーバサイドプログラム(サーバ側で処理した結果を利用者に送るプログラム)もあり、多くのWebアプリケーションはこちらで作られていて利用者の端末に直接演算前のソースコードを送る訳ではないのでWebアプリケーションは簡単に模倣できないようになっています。(とはいえ時々開発データが漏洩することもあるので確実ではないですが)
その他ホームページに関わる著作権のあれこれ
さて、前述の通りホームページの大元にあたるデータはソースコードで流用のしやすさなどは前述の通りですがホームページに係る著作権は他にも多々あります。中で使われる画像とか、埋め込まれている音源データとか、表示している文章とか様々です。さらにこの様々なデータにそれぞれ著作権が発生しているケースもあるのが意外と厄介なところ。中で使用する画像一枚を例にしても、素材になる写真を撮影したカメラマン、素材写真をもとにイラストなどを追加して画像を仕上げた制作者、その画像を最終的に販売した人など用意した画像によっては複数人のステークホルダーが存在しています。
それぞれに利用制限があることも考えられるため『ホームページで使っているこの画像がよくできているからパンフレットなどでも使いたい』と思っても著作権者が『あなたのホームページで利用することは許諾しているが他の媒体で使用するのであれば使用料を払ってください』と権利を主張すれば通ってしまうことがあります。
「通ってしまうことがある」と曖昧な表現にしましたのはここら辺の細かい著作権については契約書などを取り交わしていないケースも多いため、問題になった時にどちらの主張が通るかはそれまでのやり取りの記録などを照らして判断することになるため、どちらに有利な状況証拠があるかなど不特定要素も多分に含まれるためです。いずれにしても委託して制作したものは他に流用する時に作った人に一声かけて確認しておくのが吉です。
著作権と呼ばれるものはだいたいが50年程度は権利が保護されています。映画は例外で70年です。映画だけなぜ70年なのかは憶測も多く語られているのでここでは深掘りしません。
音楽や映画はヒットすれば長年愛されつづけるので50年は適切なラインだと感じていますが、ホームページのソースコードに関してはそもそも流行り廃りの影響も大きく一度作成しても5年か10年の周期で見直していかなくてはならないことを考えると長すぎるような気もします。筆者は開発者なので長く権利が保証されるのはありがたいことではありますが。
ホームページは2000年前後から一般でも公開しやすい環境が整い、多くの制作サービスも登場しています。中には冒頭で上げましたマーケットプレイス形式でテンプレートを販売しているようなサービスも見られますが、『かっこいいデザインが安く買えるから』と安易に手を出すと実はソースコードが盗用されたものでした、なんてことも今後問題になることがあるかもしれません。プログラムの知識がないと画面を見ただけではソースコードが同じものかは判断できないですし。
今後もホームページやWebサービスをめぐる環境は変わっていくので、リニューアルなどをご検討の際はこうした問題にもご注意ください。ホームページがPCで閲覧するものから携帯やスマートフォンで簡単にアクセスするようになり、『次はスマートグラスなどのウェアラブルか!?』とも言われて久しい昨今。開発者としては新しい端末に対応するために最新のプログラム記述方法に目を通していかなくてはならないのでなかなか休まる暇のない業界でもあります。
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